清掃業務をメインとする
カストーディアルは、ディズニーリゾートの人気職種である。サービス面から見た場合、ほかの企業の清掃業務と差別化し、ブランド化したところに注目すべきだろう。オリエンタルランドがカストーディアルの重要性や感謝の気持ちを伝えることで仕事に誇りを持たせることが出来た。
カストーディアルとは、パーク内外での清掃やゲストの案内を仕事としている。カストーディアルは英語で「維持・管理」の意味だ。白のコスチュームに身を包み、身の丈に長さを合わせたトイブルーム(箒)やダストパン(ちりとり)を手に持ち、仕事する。
清掃・案内を行うカストーディアルのメイン業務はやはり「スイーピング」である。スイーピングとはトイブルームやダストパンを使用してパークの清掃をすることだ。
(出所)
キャスト採用サイト
今では人気職種のカストーディアルも、ディズニーランドがオープンして数年間は最も不人気の職種だった(
福島(2011))。1日中パークの清掃をする「きつい・きたない」の2Kの職場とみなされていた。その不人気は準社員(アルバイト)に限った話ではなく、正社員からもカストーディアル課に配属が決まると泣いたりする者もいたという。その不人気だったカストーディアルが人気となったきっかけは、上司・先輩が、後輩たちにカストーディアルキャストの重要性を繰り返し伝えたことで準社員や正社員の意識を変えていった。
①カストーディアルは「清掃担当」でなく、「維持・管理」という意味②カストーディアルは自由にパークを動けるので、困っているゲストを助ける事が出来る――上記のことを繰り返し伝えることにより、カストーディアルキャスト自身に自らの仕事に誇りを持たせることができた。
会社自体もカストーディアルの仕事の重要性を伝えることに積極的で、舞浜駅や東京駅にある東京ディズニーリゾートの広告にカストーディアルキャストが大きく写っているものも多い。
また、正社員が入社した後の3カ月以上にわたって行われる新人研修のうち、1カ月をカストーディアルの実習にあてる。これは正社員だけでなく準社員にも、カストーディアルの重要さを確認させるという。さらに、年に一度開催され、正社員がパークに準社員をゲストとしておもてなしする「サンクスデー」(アルバイト感謝デー)では、歴代社長はすべてカストーディアルとして準社員をもてなしている。サンクスデーで、社長がおもてなししている事にも驚いたが、お掃除キャストとしていた事にはさらに驚き、同時にカストーディアルを重視していることが伝わる出来事だった。
会社全体で重要性を伝えることにより、清掃・管理のカストーディアルは自分の仕事に誇りを持ち、積極的・主体的に仕事に取り掛かるようになった。今では、落ち葉や水たまりの水を利用してディズニーキャラクターの絵を描いたり、ローラーブレードを履いてスイーピングを行ったりしてショーアップ化をはかるようになった。また、仕事のスキルに応じて「段位」を設けて意欲向上をさせるアイディアを準社員が考えるようにもなった。このように、全体での認識を変えることによって、カストーディアルは人気を高めるようになった。